自作の化繊キルトの保温性を上げるために、ダウンをぶちこむ計画を立てています。化繊キルトは結露からダウンシュラフを守ることを主な目的として作ったので、ただのダウンより濡れに強い撥水ダウンのほうが望ましい。しかし手元に撥水ダウンはない。
ということでユニクロのダウンジャケットをバラして、ニクワックスの撥水剤で撥水ダウンを作って、化繊キルトにぶちこみます。ただその前に撥水効果はどんなもんかちょっと検証してみたい。
ニクワックスのダウン用撥水剤のダウンプルーフのレビューでは高評価が目立ちます。加工後のジャケットに水を垂らした映像を見ると、どうやら効果は期待できそう。ただその映像はジャケットのシェルに水を垂らしてるだけで、肝心のダウンに撥水効果が付与されたのかがわかりません。
この記事では「加工後のダウンに水滴を垂らしたら撥水してたよ」とか、「ダウンプルーフで洗ったダウンは撥水ダウンになるとメーカーが言ってる」とか書いてあります。それを信じてもいいんですけど、どうせ化繊キルトにぶちこむときにジャケットを解体して中身をバラすので、ついでに撥水性の検証をしてみます。
そして検証の結果、撥水効果はよくわかりませんでした。
ニクワックスの効果がないという意味ではなく、素のダウン自体にも撥水性があったため、加工前後の差が見えにくかったんです。水に浮かべたり、湿度80%の環境でロフトの差を見たりしたんですが、差がでなかった。シェルの撥水性にはハッキリと違いが出ましたが、ダウンそのものの差はとてもわかりづらい。
今回の検証では「ダウンプルーフで撥水ダウン化できる」と断言はできない結果になりました。ただし、ダウンを洗濯するついでなら撥水処理も簡単ですし、シェルの撥水性は確実に高まりましたんで、ダウンプルーフを試す価値はあると思いました。
加工方法
この記事では詳しく触れませんが、ざっくりと撥水加工の方法を書いときます。
まず使用するのはユニクロのボリュームダウンジャケット(640FP)。化繊キルトにぶちこむダウンはすこしでいいので、上の画像のようにジャケットの片方の袖を切り離して、袖だけ加工します。袋に詰め直した肩付近のダウンは比較用のため加工しません。
1.ニクワックスのダウンウォッシュダイレクト(洗剤)で洗濯する
2.ダウンプルーフ(撥水剤)50mlを溶かした温水に30分浸ける
3.水が濁らなくなるまで濯ぎ乾燥(乾燥機30分はやり過ぎた気がする)
洗剤や撥水剤の量は調整しましたが、基本的にはパッケージに書いてある通りにやりました。
検証内容
撥水加工前後のユニクロのダウン(640FP)を比較して検証します。
1.水に浮いてる時間を測定
2.水に沈めて撥水の膜ができてるか確認
3.湿度80%の環境に3時間放置しロフトの変化を確認
4.シェルに水を垂らす
検証内容はこんな感じです。「こんな装置を作ればもっと正確なデータを取れたのに」なんて反省もありますが、ひとまず順番に結果を書いていきます。
1.水に浮いてる時間を測定
ダウンが水に沈むまでの時間を計測しました。むき出しのダウンだと散らかってめんどくさいので、お茶パックに入れたまま検証。重量はパック込みで1gに統一。
そして30分経過してもどちらも沈むことはありませんでした。途中でシェイクしても変化なし。
ずっと観察してるのもめんどうになったので、35分時点で検証中止。お茶パックに入れなければ違いが出たのかなあ。
2.水に沈めて撥水の膜ができてるか確認
加工前のダウン pic.twitter.com/38RrxJm9vI
— モージュー (@yama_chari) February 4, 2022
ハイカーズデポのダウンバッグの説明を読むと、撥水ダウンを水に突っ込むと膜ができるとあったので、同じように検証してみました。ダウンの量は統一していません。
撥水加工の有無に関わらず、どちらも動画のように膜ができました。揺すっても膜は保たれたままでした。ただ撥水加工をしたダウンのほうが水面をツルツルと滑って押し込みにくかったです。押し込もうとするとツルンと滑って水面から弾かれるような感じ。
3.湿度80%の環境に3時間放置しロフトの変化を確認
熱湯が入ったカップとダウンの上から大きなタライを被せ湿度が高い環境を作り、ロフトの差を観察しました。ダウンの重さは統一していません。湿度は80%前後を保てたと思います。
検証前後の画像を撮影する角度が悪かったのもあるんですが、肉眼で見てもハッキリとわかる差はありませんでした。無加工のほうがロフトが低下してるような気がしないでもないんですが、検証装置が悪く客観的に判断することができません。
透明な容器にダウン入れてメモリを書き込めばロフトの変化がわかりやすかったなと後から気づきました。
4.シェルに水を垂らす
最後にシェルに水を垂らして様子を観察しました。テープを貼っているほうが撥水加工後です。垂らす水量は適当。
まずシェルに付いた水滴の形が違いました。ニクワックスで加工したほうがより粒が立っているような感じで、無加工は潰れたような水滴になっています。水をかけ流すようにすると加工シェルのほうが勢いよく流れていきました。
また少量の水をかけたあと、加工したシェルは一切染み込んでいませんが、無加工はすでに染み込んでいます。
そしてよく観察して気づきましたが、加工したシェルのほうが色がすこし白っぽくなっています(画像左が加工後)。ダウンプルーフが白色でしたし撥水成分で覆われているということでしょうか。Amazonで「白いシミが付いた」というレビューがありますが、おそらくすすぎ不足ですね。
検証結果「撥水ダウンになったかは不明だがシェルの撥水性は確実に高まった」
今回の検証ではユニクロのダウンを撥水ダウンにできたのかはわかりません。ただシェルの撥水性は確実に向上していたので、ダウンそのものにも撥水加工が施されたと考えるのが自然だと思います。
加工前後で差が出なかった理由を考えてみると、
・そもそもニクワックスに効果がない(シェルにはあるけどダウンにはない)
・検証方法が悪い(ダウン量の統一、検証の装置、実際の使用シーンより設定が甘い)
・洗浄、施工時点でミスをしている(濯ぎすぎて撥水剤が流れてしまったとか)
・ユニクロのダウンが販売時から洗浄が不十分なため、ダウン本来の油分が多く残って撥水していた(何度か普通の洗剤で洗ってるけど)
・乾燥機にかけすぎて撥水加工を施したダウンが傷んだ(ロフトは回復しているが質感が違う)
可能性があるとすればこのへんかなあ。やっぱりもっと検証方法を詰めてやればよかったですかね。客観的に変化がわかるような装置を用意するとか、ちゃんと重量や嵩を統一するとか。そこまでやるとかなりめんどうだけど。
とりあえずこの撥水ダウン(仮)を化繊キルトに詰めてみます。
※製品の効果を正確に示した検証ではありません。またダウンプルーフの効果を否定するものではありません