薄底の靴が好きですが、地下足袋では防水防風性など物足りないのも事実。そこで革一枚のシンプルなブーツを薄底に張り替えて、地下足袋のような足裏感覚+防水防風性を持った靴を作りました。
改造しようと思った動機や靴選びで悩んだことなど書きます。


※改造すると決めたのが数ヶ月前だから細かいことは覚えてない。
やりたいこと
・登山
・自転車
・登山と自転車を交えた遊び
やりたいのはこういうの。
登山と自転車を交えた遊びというのは、登山口まで自転車でアプローチしたり、そのまま山道を自転車と共に超えて行くようなこと。山岳サイクリングやパスハンティングと呼ばれるようなジャンル。
低い山でのんびりと楽しんでます。
動機
ほしい靴がない。
動機はこれに尽きます。
・登山と自転車を複合した遊び方をしている
・足首の手術経験があるほど捻挫をしやすい
・ゴアテックスが好きじゃない
・性格、好み、冷え性など…
こんな自分なので、山向け自転車向け問わずほしい靴がないんです。正確にはどうせ無いだろうと思いちゃんと調べてません。
理想に近いのは地下足袋
トレランシューズやトレッキングブーツも試した中で、もっとも理想に近かったのは地下足袋や足袋靴(作業靴)でした。
・薄底で足裏感覚に優れている(怪我予防/シンプルさ)
この点は自分にとって譲れないようです。
登山靴だろうがトレランシューズだろうが、底が厚い靴に足を通すと不安を感じます。薄底に比べて重心が高いし地面の感覚が分からないしで怖いんです。
薄底で山に登るとふくらはぎの負担が大きくなるので、トレッキングシューズやトレランシューズを使った時期もありましたが、負担減のメリットよりも不安のほうが勝りました。
登山靴や自転車靴は硬いソールが推奨されてると思いますが、足裏感覚を求めると柔らかい薄底がいいので硬いソールは諦めています。装備の軽量化や身のこなしで解決できれば。
3つの不満
地下足袋の不満は以下の3点。
1.防水性と速乾性が低い
2.防風性が低く自転車でつま先が冷える(冷え性持ち)
3.町中で使いにくい見た目(解決済み)
1.地下足袋は綿素材のものばかりで防水性は皆無。防水性は低くとも水抜けがよく乾きが早ければいいですが、綿なので当然乾きは遅い。地面に近い部分がゴムコーティングされた地下足袋もありますが、上から降られると濡れますし水抜けの悪さが目立つ気がして避けてます。速乾性に優れた素材の地下足袋がほしいと思った人は少なくないのでは?
2.防風性の低さは冷え性持ちの自転車乗りには辛いです。地下足袋の防風性は低く、ゴアテックスのような防水透湿メンブレンも非搭載。夏場はいいんですが冬は無理でした。シューズカバーを装着しても大きな効果は得られず(自作品で完成度が低かったせいかも)、そもそもカバーを付けるのがめんどくさい。
3.指が割れた地下足袋は町中を走る自転車では照れくさいので履いたことがありません。一般的な靴と同じつま先の足袋(先丸)を履いて対策をしていました。ローカットで先丸の足袋靴はかっこいいので登山や自転車だけでなく普段履きにもしてます。くつたろうを履いていますが、そろそろ親方寅さんに買い替えたい。
「革一枚のシンプルなブーツの改造」を選んだ理由
私がほしいのは、地下足袋の不満を解決し性格を反映した靴。
・地下足袋のように薄底で足裏感覚に優れていて軽量
・ゴアテックスを使わず防水できる
・靴単体で冬の冷たい風をブロックできる
・町中でも違和感のない見た目
・シンプルで長く使える
・動きやすい
・蒸れにくい
・通年使える
どうせこんな靴ないだろうなと思い既製品そのままに頼るのは早々に諦めました。そして考えついたのが革一枚のシンプルなブーツを薄底に改造すること。
革は防水性と防風性を両立できる可能性がある
ゴアテックスを搭載すると安心感はありますが、外から破損が見えないのが嫌いです。破損に気づくのは現地で濡れたときだけ。それに靴としてはまだまだ履けるのに、ゴアテックスが破損した時点で防水性が著しく低下し買い替えになるのも嫌。ならはじめからゴアテックスを使わないで、他の方法で濡れと付き合いたい。だから大半の登山靴はNG。
そこで非防水のトレランシューズの薄底化を考えます。温かい時期は濡れたまま、寒い時期はビニールソックスを併用すれば行けるかもと。ただ今度は防風性が下がります。冷え性持ちが冬に自転車に乗るには防風性は必須なので、非防水のトレランシューズは却下。地下足袋も防風性の低さが課題でしたし。シューズカバーはめんどくさいので極力使いたくない。
ゴアテックスやそれに類する素材を使わずに防水と防風を備えた靴がほしい。そこで裏地もない革一枚のシンプルなブーツの薄底化を考えました。
・革だから防風性は高いはず
・オイルを塗り込めば防水性を高めることができる
・濡れても革一枚だからタオルで拭き取りやすい
・大雨はビニールソックス併用で対策
・シンプルな作りのため自然と軽くなる
という予想です。防水と防風を兼ね備えた素材は革じゃないかと。ゴムの長靴は蒸れるからだめだった。動きにくかったし。
ほかには地下足袋のアッパーを切り取り革を縫い付けるとかサンダルに防風カバーを取り付けるとかも考えましたが、ブーツの薄底化がいちばん無難に感じました。サンダルに防風アッパーを取り付けるのは今でも候補として残ってます。夏場を中心とした3シーズンで活躍しそう。
革一枚にすると見た目とシンプルさが付いてくる
レザーブーツなんて町中でもよく見かけます。だから違和感のない見た目もクリアしやすいはず。
山や自転車の服は見てくれを気にせず選んでたこともありますが、かっこよくなくてもせめて普通であってほしいと感じました。スーパーやコンビニ、電車も使うので悪目立ちしないように。
そして革一枚の薄底のブーツなんて、超シンプル。最新の技術なんていらない。100年前から存在する。エルエルビーンのハンティングブーツ、通称ビーンブーツなんて1912年発売だもの。
なぜシンプルな道具が好きなのかはハッキリと言葉にはできませんが、
・道具に頼る部分を減らしたい
・オーバースペックがかっこいいと思えない
・工夫が楽しい/汎用性がある
・修理しやすい/長く使える
・複雑なものは脳みそが疲れる
このようなことを感じているのかもしれません。新しいギアを買ったツイートや道具の山を見ても羨ましいと感じないタイプですし。ゴアテックスをできるだけ使いたくない理由も、自分には絶対に必要なものではなく身の丈に合っていないからの気がします。
(シンプルなのが好きというか、好きな物にシンプルなのが多いだけか?)
レッドウィングの昔ながらのハンティングブーツ875
↑改造後の画像
レッドウィングといえば日本ではただのファッションブーツとして履かれることが多いと思いますが、狩猟、炭鉱、鉄道、郵便局員向けの靴を作ってきた歴史があります。アメリカでは現在でもワークブーツとして履かれているらしい。
その中から875というモデルを選びました。革一枚で裏地やクッションがないのはもちろんですが、ハンティングにルーツを持つブーツなので他のアウトドアアクティビティでも使いやすいんじゃないかと考えたからです。中古で購入。
参考:レッドウィング(RED WING)の定番「アイリッシュセッター」ってどんなブーツ? 「875」とは何?
ほかには山幸の軽登山靴も候補でしたが、履き口にクッションが仕込んであるんですよね。これが気に入らなかった。保水して乾きにくいと思う。
意外と革一枚のブーツというのが見つからないんですよね。どれもゴアテックスや裏地、クッションなど余計なものが付いています。やれやれ、最近の靴はめんどくさいなー。
だから山幸よりもっと前から存在する昔ながらのブーツから探すことにして、1958年発売の875に目をつけました。古くから存在するブーツはシンプルな作りだろうと。
改造したよ


目止め、オイル塗り込み、ソールの張り替えを行っています。改造時のあれこれは上のリンクからどうぞ。
↑新しいソールはビブラムの8338
外観
ベージュのソールが改造前、黒いソールが改造後です。
ソールはかなり薄くなりました。ウェーディングシューズっぽくも見えます。
ソールはこんな感じ。
ワラーチ作りでも使われているソールです。
登山靴と同じようにアッパーとタンが繋がっているので、水は入りにくいです。
重さ
655g→453g
200g以上の軽量化になりました。計測はどちらも紐なし。
ソールは新品状態で1枚90g。靴に張り合わせた後にはみ出た余計な部分をカットするので、ブーツに付いてるのはもう少し軽い。
以下はモンベルのシューズです。適当にピックアップしたので重さを比べてみます。上からトレッキングシューズ、トレランシューズ、アプローチシューズ。
・アルパインクルーザー800 554g(レザーモデル612g)
・トレールランダー 320g
・クラッグホッパー 390g(レザーモデル425g)
重い順に並べると、
トレッキング>875改≧アプローチ>トレラン
こんなところでしょうかね。
トレッキングシューズより軽くできたのは素晴らしいぞ。
ちなみに足袋靴のくつたろうは211gです。軽いぜ。
使用感
まだ近所の散歩やポタリング、日曜大工程度にしか使ってませんが、現状感じたことをざっと並べます。
・地下足袋ほどではないが足裏感覚は十分(足裏感覚というより重心の低さが効いてる?)
・革の防御力は高い
・足前側のフィット感はゆるめ(サイズがやや大きめのせい?)
・ランニングシューズほどではないが走れる
・地下足袋ほどの軽快さはない
・防風効果は感じられる
・防水性は未検証
まだ履き慣れていないこともあって扱いづらさを感じますが、自分史上最も理想に近い靴になったと思います。
ただ不安な点もあります。
たとえば防水性が中途半端で外からの雨は防げない上に水を溜め込んでしまうとか。
そのときは水抜き穴でも開けて、排水性を高める方向でさらなる改造を施そうと思います。防風効果は保ちながら、防水性は落として排水や速乾にスペックを振る感じで。いっそのことローカット化しても面白いかもしれません。
これからたくさん履いて、ファッションブーツに成り下がった貴様の野生を目覚めさせてやるぜ。
おわりに〜ほしい靴は作れるかもよ〜
気に入ったものを長く使うとか、ゴアに頼らずワックスでカスタムする発想とか好きです。自分も昔ながらのレザーハンティングブーツ(レッドウィングの875)にオイルを塗り込んで防水性をアップさせたり、薄いソールに交換して足裏感覚をアップさせたりしてます。狩猟ではないですが。 https://t.co/lhGqv9m5gA pic.twitter.com/q6oJS8y08m
— モージュー (@yama_chari) November 26, 2022
まだ改造した地下足袋風ブーツの実力はわかりませんが、改造で理想に近い靴を自分で作り上げることができました。バックパックにバンジーコードを取り付けるほどお手軽な改造ではありませんが、やってみると案外なんとかなるもんです。
やりたいことや趣味嗜好にドンピシャの靴はなかなか見つからなくても、惜しい靴ならいくつかあるはず。その惜しい靴を改造して、理想に近づけてみるのもなかなか楽しいよ。
最後に、自作や改造した道具には名前を付けたくなる性なので、このブーツにも名前を付けましょう。
…地下足袋ならぬ、山足袋。悪くないね。
街乗り時の裾バンドは靴下 pic.twitter.com/hMq8diaZ83
— モージュー (@yama_chari) January 30, 2023
